法人の10年後はどうなっているだろうかと考えることは、不安でもありますが興味もあるところです。
しばらく前のことですが、全国介護事業者協議会で「10年後、あなたの法人はどうなっていますか」というアンケート調査がありました。
当時は介護保険制度が創設されてから10年以上が経過し、地域包括ケア元年といわれる年でした。
アンケート項目をいくつか挙げると
(1) 10年後の法人の事業規模はどうなっていると思いますか?
(2) 10年後に現在の経営手法が通用すると思いますか?
(3) 10年後の経営者はどうなっていると思いますか?
ということでした。
発表されたアンケーの回答は、以下のようなものでした。
(1)の事業規模については、大きく拡大していると思うが23%、やや拡大していると思うが53%、合せると76%の法人が将来に希望を持って拡大すると考えていたようです。
当社の現状の課題は、売り上げの減少であり将来の事業規模については楽観を許しません。
当時と比べると介護事業所数が格段に増えていることと、介護施設も当初は地域から隔離していましたが共存するようになり、将来は地域に融和した事業を展開するでしょう。
(2)の経営手法については、十分通用すると思うが11%で団塊世代が後期高齢者となる2025年に対する我々の使命は、尊厳を大切にすることというコメントがありました。
現状通りの定期的な見直しをすれば十分通用すると思うが33%、一部改善すれば通用すると思うが31%で、国の経済環境の変化や社会保障政策の見直しなど、外部要因の激変が想定されるとの注釈がありました。
次に、全体的に改善しなければ通用しないと思うが20%あり、先を見通せない状態がうかがえます。
介護の目指す方向が異なってきているので、経営手法についても考え方が変わってきていると思われます。
介護業種にとらわれない地域に融合した地域介護、高齢になっても元気で日々やることがあって、それが出来るように日常生活を支える介護が求められるでしょう。
地域にはその人を育んできた人間関係や居場所があるので、高齢者の介護は地域と一体となった活動が大切です。
(3)の事業承継については、現在の経営者が引き続き経営すると思うが22%、子供や親族が経営すると思うが25%、法人内の人材が承継すると思うが31%です。
その他、ご利用者や職員の雇用を確保する、企業の合併や買収(M&A)が増えつつあります。
当社でも事業承継の準備を進めていますが、承継者に伝えたい介護についての想いを次に記しておきます。
ノーブレスオブリージ(noblesse oblige)という言葉がありますが、高い身分に伴う道徳上の義務という意味で、フランスの貴族に求められた徳義とされています。
貴族は普段恵まれた生活をしていますが、いざ戦争というときは、必ず先頭に立って戦うものとされていました。
この考えはアメリカでは裕福なものは貧しいものに富を分けるものとされ、イギリスでは必要なときに困った人に手を差し伸べあうという市民性となっています。
強いものは弱いものを、ごく当たり前に助けなければなりません。
人は自分の思っているよりももっと強いもの、もっと大きいものです。
その力を誰でも持っている、私も持っている、その力を誇りとして介護の仕事に注ぎたいと思います。